人工透析(オンラインHDF)
Dialysis
Dialysis
腎機能が正常の10-15%以下になると、透析や移植などの腎代替療法(腎臓の機能を代行する治療)が必要です。人工透析とは透析器(人工腎臓)を介して血液をきれいな状態に戻す治療のことです。週3回各4時間が標準透析とされていますが、荒廃前の腎臓は週7日間、24時間働いており、標準透析で十分な解毒効果が得られるかは個人個人で異なります。
透析が開始されると腎臓内科の外来が終診となることが多いですが、慢性腎臓病が治った訳ではありません。透析導入後は、透析膜、透析血流量、透析薬剤に加え、日々進歩する腎臓病関連の内服薬の調整など、さらに綿密な専門的加療が望ましいとされています。こういった内科的管理の重要性は見過ごされがちですが、当院では腎臓病の専門指導に加え、糖尿病の管理にも力を入れて参ります。
至適透析とは「死亡率を可能な限り低くする透析」といった概念です。標準化透析量(Kt/V)あるいは尿素除去率(URR)などの透析効率において「死亡率(死亡のリスク)を可能な限り低くする透析量のレベル」を至適レベルと定義し、それを追求するものです。
日本透析医学会が推奨するレベルを上回る条件を目指して適正な透析を行うことで毒素を除去できた分、牛肉や豚肉といった蛋白質もしっかり取ることができます(1-1.2g*BW推奨)。栄養摂取の見直しにより血清Alb値といった栄養状態を改善させることは免疫力を高め、フレイル(高齢者の虚弱体質)に代表される様々な合併症を予防できます。
当院では治療の大前提として至適透析を追求しております。併せて栄養状態が改善するように管理栄養士による個人指導の介入を行うことで、何十年でも長く元気に過ごせるようにサポートしております。
当院では施設透析の中でも特に優れているon-line HDFという治療法を提供しております。
HDFとはHemo Dialysis Filtrationの略で、通常の透析では取り除けず体内に蓄積されてしまう低中分子物質の老廃物((β2マイクログロブリンなど))の除去を行うことで心臓への負担の軽減、血圧の安定化、かゆみや四肢疼痛の改善、残存腎機能の保護、余命やADLの向上をはかることができます。On-line HDFでは専用の回路に透析液を多量に補液することで、より多くの老廃物が除去できます。
2012年よりオンラインHDF使用する透析液についてより厳しい水質基準が定められており、当院では頻回に水質検査を行いながら、清浄度において法令に定められた注射液製造基準を上回る高いレベルを維持しております。On-line HDFにおいては学会基準を満たすonline prepared substitution fluidと呼ばれる完全に無菌かつ無毒な状態を維持した透析液を使用しております。
当院では最大6時間までの長時間透析に対応しております。透析においては1回4時間の透析が「標準透析」とされていますが、必要な透析時間、回数は個人によってさまざまです。
就労している方、体格の大きい方は必要エネルギー量も大きく、一回4時間の透析では毒素を除去しきれず、透析中の血圧変動、慢性的な疲労感、皮膚の色素沈着、関節の痛みといった症状が出ることがあります。また、生活強度から乖離した過度な栄養制限からフレイルと言われる虚弱体質に陥ることもあります。そういった場合に透析時間を最大6時間まで延長することで、透析中、透析後のつらさや日々の倦怠感が改善することがあります。
当院では、腎臓内科専門医の診療のもと、月水金、火木土ともに23:30までの夜間透析に対応しております。曜日変更があっても23:30までしっかり透析を行うことができ、腎臓内科専門医による慢性期からの継続した診療を受けることができます。海外の研究では専門医の診療下に管理されていたかどうかで生命予後や合併症発生率が異なるという報告が知られています。慢性腎臓病という難解かつ重大な疾病と上手に付き合い、悪さをさせないために、どの時間帯であっても腎臓病の専門家が相談に乗り、適切な薬剤調整やアドバイスを受けられる環境が大切です。
仕事をしていることで透析治療において不利益(十分な時間が取れない、きちんとした診療が受けられない etc.)を受けることがなくなるように、通院される患者さんをサポートできたらと考えております。